ベネッセ教育サイトから転載
2020年度の中学入試もすべての日程が終了し、それぞれの学校の受験者数がすべて出揃いました。今年の入試は受験率が14.3%で3年連続の伸長となりましたが、どのような傾向が見られたのでしょうか。森上教育研究所がお伝えします。
今年はなんといっても午後入試のインパクトがある入試でした。受験者数の推移を見ると、今年はおよそ5万人規模となりましたが、2018年の3万8000人、2019年の4万4000人と比べると、ここ3年は約5000人ずつ増加していることがわかります。
たしかに、全体として見ると1回のみの入試を実施しているのは、男子では開成・麻布・慶応普通部、女子では女子学院・桜蔭・立教女学院・雙葉・フェリスなどごくごく一部に限られてきました。
いわば、これは「強者の選択」で、1回の入試でも受験生をたくさん集める学校以外は、2回、3回と入試を実施し、少しずつでも受験生を集める選択をする、このような様相が現れてきました。
全体の傾向を見ると、男子校・女子校においては男女別学も含めて上位校・中堅校・中下位校と偏差値に関係なくほとんどの学校で受験者数が増加しました。一方、これまで人気だった共学校は一部の中下位校を除いてほぼ横ばいでした。男子校・女子校は上位校以外は横ばいか減少する傾向が多かった中、これは非常に珍しいといえるでしょう。
たとえば、2月1日午前の入試で受験者数の前年比を見ると、男子校は早稲田114%、駒場東邦109%、攻玉社122%、芝浦工大付属129%、成城111%、城北120%、巣鴨162%、女子校は共立女子116%、香蘭女学校108%、雙葉115%、洗足学園114%などが増加しています。
共学校に目を向けると、大学付属の学校は増加傾向があるものの(上位校だけでなく、中堅の付属も増加)、それ以外の受験者数はほぼ横ばいか減少する結果となりました。
なぜこのような珍しい現象が起こったのか、理由を推測すると二つ挙げられると思います。
一つは、去年までの男子校・女子校と共学校の倍率では1倍近く差があり、共学校が人気だったということ。共学校で受験生が増えるという予想のもとに、受かりやすそうな男子校・女子校に人気が集まったわけです。
もう一つは、今、中学受験をするお子さまの保護者のかたの世代が中学受験を経験した際は、男子校・女子校が中心で共学校があまりなかったため、自らの経験をもとに男子校・女子校を選んだのではないかということも考えられます。ただ、今年突然男子校・女子校が増えたことは世代では説明できないため、2番目の説は少し弱いかもしれません。
東京以外の首都圏を見てみると、千葉・埼玉・茨城は受験者数が増加しましたが、来年これら3県では小学6年生人口がそのものが減少しているため、このまま受験者数が増え続けるとは言い切れません。今年大幅に受験者数が増加したのが埼玉県の大宮開成でした。大宮開成はその名のとおり大宮にある学校ですが、大宮は公立のさいたま市立大宮国際中学校が設立されたのをきっかけに併願先としての私立中学の受験需要が増えてきているように見受けられます。
神奈川県は、小6人口の減少も影響してか、そこまで受験生は増えませんでした。
東京の受験者数に比べると、同一日程の神奈川・茨城の増え方は緩やかですが、この要因の一つには東京都の高等学校等就学支援金によって世帯年収910万円以下の家庭で私立高校の授業料が軽減されること(記事作成時点では審議中)も大きいのではないでしょうか。
世帯の年収にもよりますが、私立の中高一貫校を選んだ場合も、高校で授業料の負担が半額程度で済む可能性も出てきました。この支援金を利用できる東京の学校に通うという選択肢が強い誘因として学校選択に影響したとも思われます。
プロフィール
森上展安
森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。
平成最後の首都圏中学入試が2月1日、ピークを迎えている。一部の教育熱心な層だけの関心事だった中学受験も、いまや首都圏では5人に1人が挑む時代になった。今年受験を迎えた子を持つ親世代は、ちょうど平成になった頃の小中学生。偏差値表を見て、当時の学校の並びとの違いに驚くことも多いかもしれない。平成の30年で勢力図を塗り替えたものとは
■進学校=別学を変えた共学進学校の誕生
中学受験の動向に詳しい森上教育研究所代表の森上展安さんは、この30年の大きな変化として「当時の難関私学は男子校と女子校しかなかったが、共学の進学校ができた」ことを挙げる。
東京学芸大附属や筑波大附属など都内の国立しかなかった共学進学校だが、私学として成功したのが渋谷教育学園幕張(千葉)、渋谷教育学園渋谷(東京)だ。
渋幕、渋渋として知られる姉妹校は、大手進学塾の四谷大塚や日能研が公開している偏差値ではともに女子が最難関。男子も筑波大附属駒場(東京)、開成(東京)に迫る難易度に。
渋幕は昭和58年に高校が開校。一昨年は78人の東大合格者を出すなど、合格者数ランキングではトップ10の常連となり、昨年の合格者数は東大48人、京大13人、一橋14人、東工大12人、国公立医学部計46人だった(卒業生372人)。
一方、渋渋の前身は渋谷女子高。“渋女”といえば、おしゃれなグレーの制服に渋谷と原宿の間という完璧な立地、アラフォー世代にとってはコギャルの代表校的存在で、その華麗な変身には驚くはず。
同校は平成8年に改組し共学の渋谷教育学園渋谷となり、昨年の大学合格実績は東大25人、京大5人、一橋11人、東工大5人、国公立医学部計10人。激戦区の都心で屈指の進学校へ変貌した背景を森上さんはこう語る。
「渋渋には渋幕という成功例があった。渋幕も最初は偏差値50足らずだったが、渋渋ができる頃には60くらいまで上がっており信頼感があった。ここまで上がったのは、都内に共学進学校が少なく共学志向が強まった女子につられて男子も動いたからでしょう」
女子の共学人気と進学熱が押し上げた結果と見ている。
そしてもう一校、森上さんが「大化け。劇的に変わった」と挙げたのが広尾学園(東京)だ。前身は順心女子学園という目立たぬ存在で、廃校の危機にさらされると平成19年に広尾学園に改称し共学化。インターナショナルコースで特色を打ち出し、23年には医進・サイエンスコースも設置された。
「共学志向が高まる中、渋渋などの受け皿となりグローバル志向を満たしてくれる学校で、さらに言えば、偏差値が分からず手あかがついていなかった。学校側も期待に応えた」と森上さん。上位校に届かなかった層を取り込むと、一昨年は東大6人、京大5人の合格者を出したことで注目を集めた。
新勢力で切り札になったのが国際色だ。広尾学園は78人、渋渋と渋幕は30人近く海外の大学に合格者を出しており、森上さんは、「東京の伝統校になくて渋幕にあったのは国際化。ハーバードなど米国の大学に進学というのは渋幕が先鞭をつけた。帰国子女を中心に上手くやり、別の魅力があったのも大きかった。広尾も海外に進学しやすいカリキュラムで、学校に行けばネイティブの専任教員の多さに驚く。充実度が全然違う」と、新興校ならではの魅力を語る。
大学の新設学部では国際が乱発されているが、それは中学受験でも同じで、大手進学塾のベテランスタッフは、最近の傾向として「なんでも国際とつければいいという流れになっている」と、2文字の威力を力説する。
「受験生の親に大学ブランドと、英語、国際の志向が強い。交換留学やネイティブの先生がどれくらいいるか。渋谷系は国際と英語を売りにしていて海外大進学を推し進めていて実績もある。海外大に強い学校は人気」
“国際”は平成の受験界のパワーワードだったのかもしれない。
■進学校の地位を不動にした女子校“新御三家”
別学の躍進校で真っ先に挙がるのは豊島岡女子学園(東京)だろう。もとはお裁縫学校で、朝の5分間運針で知られる同校は、30年前に入試日を変更し、御三家などを受ける上位層の併願校としての道を選ぶと、今では女子校最難関の桜蔭(東京)と並ぶまでになった。進学塾スタッフによると、最近では桜陰ではなく、あえて豊島岡を選ぶ子もいるという。「昔ならありえなかった。御三家は自学自習ができる子に向いているが、豊島岡は面倒見が良い。御三家に食い込もうとがんがん鍛えてくれて、実績も上げている」
森上さんが豊島岡とともに「勝ち組」女子校に挙げたのが、東京の鴎友学園女子と吉祥女子、そして神奈川の洗足学園だ。
豊島岡と合わせて“新御三家”とされる鴎友と吉祥の躍進理由を、森上さんは「25年から30年かけて改革したリニューアル校。高校入試ではどちらも偏差値40くらいだったが、少子化が進む中でハイレベルな中高一貫にしないと生き残れないということで、中学に力を入れてイメージを一新した」と語る。
そして、今や桜蔭を狙う子の併願校となった洗足学園は、立地も追い風に、神奈川の女子校トップに君臨してきたフェリス女学院に並ぶ難関校になった。「田園都市線沿線(溝の口)で横浜都民がたくさんおり、上昇志向の強い親が多い地域。当時の校長先生が『神奈川北部のフェリスにするんだ』と言うとみんな笑っていたけど、本当にそうなった」(森上さん)
ここに挙げた学校にも共通するものがある。帰国子女の積極的な受け入れだ。
森上さんは、「帰国子女は伝統校が嫌がった。異文化なので学校の色に染めるのに時間がかかる。そこを共生しようとしたのが渋幕、渋渋、そして洗足と鴎友。帰国生が多いことで英語のモチベーションがすごく上がる。大学受験は英語が決め手。女子校は早慶など私大で実績を出し、それができたら国立、理系、医学部に力を入れて進学校にしていった」と、柔軟な方針が奏功したとみる。
進学実績が人気に直結するのは仕方ないとはいえ、大手塾スタッフは、それ以外の魅力もあると話す。「吉祥はバランスが取れていて、芸術系に進学する生徒も多い。色んな可能性を広げて伸ばしてくれる。洗足も音楽に力を入れていて、人気にはそうした理由もあるのでは」
新たな女子進学校が台頭する中で、森上さんが「大苦戦」と指摘するのがカトリック系の女子校だ。いわゆるお嬢様学校は厳格な校則で知られ、「カトリックの良さではなく大学進学にばかり目がいくようになってしまった。いい学校でありながら、厳しいゆえに楽しさを訴えられていない」と残念がる。
厳しさが好まれないのは男子校も同じ。パワハラやブラック校則が世間を騒がせるご時世ゆえ、日々受験生と接している進学塾のベテランスタッフも、こう明かす。
「こういう時代なので本郷や成城、海城のような自由で男子校を謳歌できる学校が好まれて、校則が厳しいところは敬遠されがち」
校風で明暗を分けたのが、男子校“新御三家”とされる海城(東京)と巣鴨(東京)だ。以前はほぼ並んでいたが今では両校の難易度には開きがある。
厳しいと言われる巣鴨のHPを見ると、「硬教育(努力主義)による男子英才教育」の理念から始まり、年間行事には「大菩薩峠越え強歩大会」、総フンドシ姿の「巣園流水泳学校」、さらには「蹴球班」「籠球班」と呼ばれる部活動紹介と、なかなか勇ましい文字が並ぶ。
約20年前の卒業生に聞くと、
「毎朝、詰め襟が閉まっているかチェックされて、3回見つかると親を呼び出して反省文。買い食いも禁止。柔剣道が必修で全員有段主義、早朝寒稽古もあった。夏合宿も、朝5時半に起こされて夜11時くらいまで勉強。みんなどうやって脱出するかみたいな感じで、遊びたい盛りにはきつい。海城とかの方がイケてた」
と、消化不良気味な青春の思い出が返ってきた。それでも、こう笑った。
「生きる力という理念はいいし、本当に強靭な人間ができるので、今の子にもはまったらとてもいい教育だと思う。最近はマイルドになったと聞くけど、友だちの中には『それじゃイカン』と言う人もいる」
森上さんも「巣鴨は昔と全然違うので、もっとイメチェンを推していかないと。これから良くなる」と、期待する学校だ。
世の流れを反映してきた受験の世界。次の時代を引っ張るキーワードは果たして……。(小林幸帆)
2019.2.6
アエラから転載
東京都世田谷区の名門女子校「鴎友学園」では、「3日に1度」の頻度で席替えを行っている。なにが狙いなのか。44年間、女子教育に献身してきた吉野明名誉校長は「席替えを繰り返すことで、小さな集団でまとまらず、クラス全体が自然な形でまとまる。これは女子の集団の作り方にあっていると思う」と説く――。
「自分の自己肯定感が低いので、せめて娘は高い自己肯定感を持った子に育てたい」
最近、そのような話を耳にすることが多くなりました。自己肯定感とは、自分の存在を肯定し、大切にしようとする気持ちのことです。自己肯定感が仕事のパフォーマンスや人間関係に影響を及ぼすという理由で、その低さを気にする大人も多くなりました。
そしてそれ以上に、自己肯定感は現代の子育てにとって、最大のキーワードでもあります。子どもの自己肯定感を高く維持することができれば、子育ての最重要ポイントの一つは終わったと考えてもいいほど、将来にわたって大きな影響を与えると考えられているからです。冒頭のように思う親御さんが増えるのも無理はありません。
私は鴎友学園で教師として44年間勤める中で、生徒たちの自己肯定感を高めることがどんなに大切なことかを、とくにここ数年、痛切に感じてきました。思春期に親がどのように接するかで、お子さんの自己肯定感は大きく変化します。思春期がどのようなものかを知り、接し方をほんの少し変えることで、お子さんは確実に変わっていくのです。
日本の子どもの自己肯定感が総じて低いことは、公式の調査データからも明らかです。内閣府『平成26年版子ども・若者白書』では、「自分自身に満足している」と答えた日本の若者の割合は45.8%で、アメリカの若者の86%のおよそ半分という値に止まっています。また、年齢別に見ても、社会に出る20~24歳の値が37.4%と、著しく低くなっています。思春期の間に低下し続けた自己肯定感は、ちょうど就職する頃に最低となってしまうのです。
今の子どもたちは、世界の人々と当たり前のように協力して働いていかなければならない時代を生きていきます。学問にしても仕事にしても、日本の中だけで完結することのほうが少なくなっていくでしょう。そのような時代に、自己肯定感の高い国の人々と同等以上にやっていくためには、自分のことを信じて、つまり自己肯定感を持って物怖じせずにチャンレンジしていく力が必要になります。私たち大人は、家庭であれ、学校であれ、そういった力をつける手助けをしていかなければなりません。
では、女の子の自己肯定感はどのようにすれば上げられるのでしょうか。それには女子ならではのコツがあります。
例えば、男子と女子では集団のつくり方が全く違います。男子は子どもの頃からタテ社会の競争原理の中で生きています。ボスがいて、フォロワーがいて、パシリがいて、という数人から十数人の大きな集団をつくります。クラスメイトでなくても、それは同じです。一緒にゲームを楽しむ仲間同士でも、ゲームの腕や持っているアイテム数によって、自然とヒエラルキーができてくるものです。競争して、切磋琢磨していくタテ関係のほうが落ち着くのが男子です。
一方、女子はヨコにつながった人間関係を心地よく感じます。上下を決めずに、それぞれの場とコミュニケーションを大切にする感覚です。
自己肯定感が高い子たちが集まると、ヨコの人間関係は自然に形づくられていきます。部活をがんばる子たちのグループ、漫画が好きな子たちのグループ、オシャレが好きな子たちのグループ、勉強ができる子たちのグループ、あるいは別々のことでがんばっている子たちが一つのグループをつくり、それぞれが「私はここでがんばる」という場を持ち、他のグループの存在も認め合います。同じグループでなくても「がんばれ!」と言い合える関係は、1人ひとりが自立して自己肯定感が高く他人を認めることができるからです。
しかし、自己肯定感が低い集団では、自分も他人も認めることができず、常に相手を否定する目線で見るようになってしまいます。そうなると、集団はだんだんとタテ型になっていきます。「この子は私より下、あの子は上」というようにタテの関係を構築してしまうのです。この場合の指標は、成績、容姿、家庭状況などさまざまです。タテの人間関係が本質的に向かない女子にとっては、非常に辛い関係性となってしまいます。
鴎友学園では、入学後すぐに、自己肯定感を高める取り組みを積極的に行ないます。それは女子が安心していられるヨコ型の人間関係を構築するためです。自己肯定感が上がると、勉強も落ち着いてできるようになり、成績も上がります。自己肯定感の高さがやる気を生み出し、自分から勉強するようになると成績にも表れて、ますます自己肯定感が上がる、というプラスの循環を生むようになるのです。
具体的な取り組みの一つは、3日に一度の席替えです。いつまで続けるかはクラスの状況によりますが、大変好評で高校3年でも、少なくとも2週間に一度は席替えを行っているようです。席替えによって、いつも同じではなく違う相手と授業中に意見を交換したいという生徒の希望によるものです。
女子校に入ってくる生徒たちの中には、自己肯定感が非常に低く、人と話すことが極端に苦手な子もいます。このような子は、放っておくとクラスの片隅で誰にも気づかれることもなく、誰とも話すことなく1学期を終えてしまうものです。
しかし、3日に一度席替えがあれば、少なくとも「おはよう」「名前は?」といった会話を3日に一度はすることになります。前後の席の子が挨拶をしてくれば、その機会はもっと増えるでしょう。
挨拶というのは、私たちが思っている以上に重要なものです。実はこれが自己肯定感を上げる第一歩になります。「挨拶ぐらいで大袈裟な」と思われるかもしれませんが、挨拶は「目の前にいるあなたを、1人の人間として認識しています」ということが前提にあり、そこから次の会話が広がっていくものだからです。
私たちは最初の保護者会で、保護者の方に「『お友達できた?』と聞かないでください」というお願いをしています。母親に心配をかけないために焦って友達をつくろうとすると、女の子の場合は気が合わなくても、しばしば名簿順に並ばされた周囲の人と“友達”になってしまうことがあります。
女子の仲間づくりのポイントは秘密の共有です。「これ、あなたにだけ話すことだから、他の人に言っちゃダメよ。もう抜けさせないからね」などと抜けたくても抜けられない状況ができてしまい、トラブルの原因にもなります。
しかし、3日に一度の席替えを繰り返すことで、子どもたちは30人のクラスメイトみんなと自然な形で友達になることができるのです。焦って友達をつくり、小さな集団にまとまってほしくはありません。
この3日に一度の席替えで、クラスが自分の「場」になった、という子が大勢いるのはありがたいことです。中には「家より学校が落ち着く」という子まで。学校でありのままの自分を出すことができるのは、この席替えの効果だと感じています。
3日に一度の席替えをする学校は、女子校でも多くはありません。でも、挨拶を周囲の人と積極的に交わすことは、どこの学校でもできることです。娘さんにも気持ちのこもった自然な挨拶をしてみたら、とアドバイスをしてあげてください。
最初のうちは「おはよう」と言っても、なかなか返事が返ってこないかもしれません。でも、「おはよう」と言い合える仲間を1人ずつでも増やしていくことで、その習慣がだんだんと周りにも広がって定着していくものです。「おはよう」を出発点に、お互いのことを少しでもわかり合えるように、少しずつ対話の輪を拡げていきましょう。
6年生まで野球・バイオリンを続けながら難関国立中学に合格した親子の体験記「小学生生活を犠牲にしない中学受験」(WAVE出版)から、中学受験を目指す親子が救われ、励まされる考え方や学習のアイデアをご紹介。フルタイムの共働き夫婦かずとゆか著。わが子をつまらない優等生にしたくない両親必読の「常識」とは?
あなたたちの感覚は間違っていない
子どもの中学受験を考えているのだけど、小学生のうちから週に何度も夜遅くまで塾通いで、しかも夕食がお弁当なんて、食習慣もちょっとね。小学生らしく友だちと遊んだり、スポーツを楽しんだり、好きな本を読んだりするのも大事な気がするのだけど…。
そんな「何かおかしい気がしている」お父さん、お母さん、その感覚は間違っていません。はっきり言います。小学生が週に何度も夜の9時過ぎまで拘束されて、10時に帰宅する生活は異常です。
実際にそういう生活を余儀なくされている受験生の親の中には、「合格はさせたいけれど、本当にこれでいいのだろうか」と、罪の意識や疑問を感じている方もいるはずです。
私がまず伝えたいのは、そうした感覚を大切にしてほしいということです。その根拠を、さまざまな観点から見ていきましょう。
「中学受験の常識」には根拠がない
中学受験の検討を始めると、まず耳に飛び込んでくるのがこうした「中学受験の常識」です。でも冷静になって、その一つひとつに「どうしてそうなの?」と素朴な疑問を投げかけると、返ってくるのは「みんながそうしているから」「塾の先生がそう言っていたから」といった答えばかりで、誰もが納得できる理由が見つからないことが多いのです。「勉強は塾に行かなくてもできる」という信念を持つ私にとって、「塾、それも大手進学塾に行かなくちゃ、中学受験は難しい」という考えは大きな疑問でした。たかが小学生の勉強を、親が教えられないというのも不思議でした。
うちは夫婦ともにフルタイムの共働きなので、お弁当をつくって塾への送り迎えはできませんし、息子をよい中学に入れるために、楽しい小学生時代を犠牲にさせることに疑問を抱いていた私たちにとって、大手進学塾に通わせるという選択肢は最初からありませんでした。むしろ逆に、「中学受験の常識」が本当かどうか、チャレンジしてみようと思ったのです。
こうして中学受験に向き合ったこの数年間で、「中学受験の常識」が何の根拠もなく、ただ伝説のように言い伝えられてきただけであることがはっきりしました。また入試を行う中学校自体は、「塾で勉強ばかりしている子」に来てほしいわけではなく、実際に受験生が勉強と健全な小学生生活を両立できないのは、「塾の都合」に振り回されているだけ、という構図も見えてきたのです。
情報発信源は教育産業の関係者!?
私たちが中学受験をさせようと検討を始めたのは、息子が小学2年生の頃でした。できるだけ客観的な情報がほしかったので、塾を絶賛している本と批判している本の両方を買って読んでみました。他にもインターネットサイトなどを見ていて気づいたのは、情報のほとんどが塾の先生をはじめとする教育産業の関係者が発信しているか、教育産業自体がスポンサーになっていることでした。塾批判の本も、個人塾の先生が昔勤めていた大手進学塾を批判しているという内容でした。
そうです。「中学受験の常識」は、一部の狭い世界の人たちが発信している情報なのです。教育産業の人たちが我田引水を狙っているとまでは言いませんが、これからの社会はどうなっていくのか、その中で子どもたちをどういう人間に育てたいのかといったことは、全く読み取れないものばかりでした。
小学生のときから塾に通ったおかげで、ノーベル賞を受賞できたという体験談なら聞いてみたいと思いますが、残念ながらそんな人は一人もいません。逆に口をそろえたように子どものときの遊びの重要性を説いています。
中学受験は子どもではなく親の受験?
このフレーズもよく耳にしますが、どんな意味なのでしょうか。小学校受験なら親の面接もありますが、中学受験では試験も面接も受けるのは子どもだけです。親のコネで入れた話もあまり聞きません。
高校受験、大学受験の場合は、個人差はあっても受験生が自立しています。どんな理由でどの学校を志望するのか、好きな科目、得意な科目は何で、苦手科目は何か、学力はどのくらいで、志望校に合格するためにはどれだけの成績が必要かなど、受験勉強をセルフマネジメントする力が多少なりともあるはずです。
これに対し中学受験は、受験生はまだ親の言うことを素直に聞く小学生で、精神的にまだ幼く、志望校を自分で決めるだけの情報、人生経験、自己分析力もありません。「うちは子どもが志望校を決めました」と言う人もいるかもしれませんが、その判断材料となった情報は親の価値観のフィルターを通したものでしょう。また子どもは親の気持ちを鋭く察して、親が喜ぶ学校を受けたいと言うのでしょう。
勉強の進め方もセルフマネジメントできないのが普通です。一般的にはそこで「塾選び」となるのでしょうが、塾に行かない場合は、教材選びや教科ごとの勉強スケジュールは親が立てなければなりません。勉強だけでなく、受験に関するすべての意思決定をするのは親で、それが合否を分けるのです。だから「中学受験は親の受験」という言葉が生まれたのではないでしょうか。
中学、高校の6年間は人格形成のために非常に大事な時期です。特に高校からは義務教育ではないため、どこに進学するかは人生の大きな決断の一つになります。私は高校受験のときに志望校を自分で決めたという自負があったので、実質的に親が決めてしまう中学受験には、何か心に引っかかるものがありました。
だからこそ、受験のために何かを犠牲にすることだけはしてはいけない。普通の楽しい小学生生活を送らせてやらなければと、強く思ったのです。
中学受験のために親が自覚すべきこと
私は子どもの中学受験を経験して、「中学受験は親の受験」という言葉が、端的な表現でありながら、さまざまな側面をうまく言い表している深い言葉だと改めて感じました。それは、中学受験は「親のための受験」と考えたほうがいいからです。これには「いやいや、子どものためでしょう」という声が聞こえてきそうですが、教育なのだから、受験は子どものために決まっています。どの家でも、子どもの将来を考えての受験という選択なのだと思います。
でも本当にそれだけでしょうか。家庭によって程度の差はあれ「親が自分の欲望を満たすためにしている」という側面もあるのではないでしょうか。子どもをどう育てるかは親が判断すべきことで、「このようにしたい」という希望や欲望があるのはごく自然なことです。でも私は、親はそのことを自覚しておく必要があると思うのです。
自分たちを振り返ってもそうなのですが、「よい中学校に入れたい」と思っているのは親で、その欲求を満たすために子どもに受験勉強をさせているのです。「子どもから受験したいと言い出した」という例外もあるかもしれませんが、基本的に子どもは、親の期待に応えるために、親の喜ぶ顔が見たくて、がんばっているのです。このことは、自分自身を見つめるより他人を見るほうがわかりやすいかもしれません。あなたの周りにいる中学受験にのめり込んでいるお母さんは、あなたの目にどう映っているでしょうか。「子どもをよい学校に通わせている母親」になりたい気持ちが前面に出ている人はいませんか。
繰り返しになりますが、それは悪いことではありません。むしろ普通なので、自分で正直に認めましょうということです。親がしっかり自覚していると、思いどおりにいかないときに冷静な対処ができます。例えば子どもにやる気がないとき、それを責めるのではなく、どうやったらやる気を出してもらえるのかを考える気持ちになれるでしょう。
2018.11.8
リセマム から転載
英語がペラペラで入試も優遇されることの多い帰国子女をうらやましい気持ちがあります。日本で生まれ育った記者は「自分も帰国子女だったら」と思ったこと、数えきれません。ですが、帰国子女の人たちも悩みが尽きないようです。青春の曲を共有できない、漢字が分からない…。中には英語にコンプレックスを持つ人も。「純ジャパ」の人たちと同じように世の中に疲れてきた「帰国子女」たちに話を聞きました。(影山遼、河原夏季)
「先輩たちと話す時に敬語なんて知りませんでした。話していて向こうがイライラしているのは分かりましたが、なんで怒っているのだろうって」
小学3年生から中学1年生まで父親の仕事のためオランダで過ごしたという会社員の男性(27)は、帰国後に途中入学した中学校で、戸惑いがあったと振り返ります。男性は、誰しも一度は習ったことのある国際司法裁判所(ICJ)のあることで有名なオランダのハーグで5年間生活。現地では、オランダ語より英語で学ばせたいという親の意向でインターナショナルスクールに通っていました。
もちろん最初は英語ができず。フォローのため、授業中に隣で専門の教師が1人ついていてくれたといいます。周りの子どもについては「話しかけてくれる子が多かった。一方、興味を持ってくれない人は全く持たない、日本と同じです」。
「教育先進国」として取り上げられることの多いオランダ。しかし、やはり厳しいことが多かったのが帰国子女。「英語が分からないのに、英語で他の科目を勉強するって無理な話。なんとなくなら分かるけれど」。一方、土曜日に通っていた日本人学校にもあまりなじめませんでした。
男性と同じ世代の記者にとってはBUMP OF CHICKENや175Rなどが青春ですが、男性は「みんなのはやりが全然分からない。いまだにカラオケではついていけません」と物悲しげ。「日本人なのに日本人じゃない感じでした」
さらに厳しい体験をしたのは、定番のアメリカ帰りを経験して、東京都大田区に住む会社員女性(26)。こちらはハリケーン・カトリーナでも知られるルイジアナ州に小学3年生から、父親のMBA(経営学修士)留学に家族全員でついていっていました。
渡米前に半年通った英会話教室は「ほとんど意味がありませんでした」。現地の学校に入学すると、算数が簡単。その代わりプロセスを問われ続けました。そもそものこととして「相手が何を話しているのか全く分からなかった」。その後、自然と話せるようになったとはいいますが難しいものです。
小学5年生で日本に戻ってからは、(純ジャパから見たら)大げさな身ぶり手ぶりをマネされ、現地にいた時は日本で習う内容はやらなかったため、隣のクラスの男子に漢字の間違いを馬鹿にされ…。半面、英語の授業は「超簡単」でした。
TOEICは900点(990点満点)。「さすが帰国子女だね」とよく言われるようですが、これ、帰国子女だからではないらしいです。中学校で初めて受けたTOEICは、リスニングが400点(495点満点)だった一方で、リーディングは100点にとどまりました。「しょせん小学生レベルの英語。長文なんて全く分かりませんでした。TOEICはビジネスの話なので…」
「まじで勉強したからなのですよね。父親が厳しかったので泣かされるまでやりました」と訴える女性。「イディオム(慣用句)もめっちゃ覚えたし、ネクステ(英語の参考書=高校の時に記者も使いました)もやりこみました」。
女性の場合、アメリカにいたのは小学校の時のみ。「中学に行っていたら、もっと発言しないと評価されなかったかもしれないけど。今でも自分の意見を言うのは得意でないです」と、ステレオタイプな帰国子女のイメージとは違った一面も。女性は「私は純ジャパよりの帰国子女」とまとめます。
2人に共通しているのは、帰ってきても日本の県庁所在地が分からない、漢字が分からないので漢字で書かなければいけない回答はだいたいバツ…。男性は「漢字や地理など日本特有の勉強ができなくなった代わりに英語ができるようになったのでトントン」とまとめます。帰国子女の中には会話は完璧だけれど、体系的に学ばなかった文法は壊滅的という人もいるそう。
入試には英語力も生かしましたが、男性は「せっかく向こうで身につけた武器は使うべきだという考えでやってきました」。女性も「苦労した分、自分の強みにしました」と話します。
意外なのが、アメリカからの帰国子女なのに「英語」にコンプレックスを持っていた人。
神奈川県鎌倉市に住む自営業の男性(29)は、メディアで働いていた父親の転勤のため、5歳から8歳までニューヨーク州で過ごしました。ニューヨークと聞くとタイムズスクエアやブロードウェイがあるマンハッタンを想像しがちですが、郊外だったそうです。これも純ジャパの偏見でしょうか…。
男性が帰国したのは小学2年生の時。鎌倉市内の小学校に編入しました。たった3年のアメリカ生活でしたが、日本に帰ってくると周囲からは帰国子女という目で見られました。「いじめはありませんでしたが、友達からは冗談で『アメリカ人』と言われましたね。からかうという感じで、コミュニケーションの一環でした」
中学校に進むと英語の授業が始まりました。授業では、「先生よりうまい」発音でどうしても目立ってしまいます。「先生もやりづらかったと思いますし、僕もやりづらいです。気を遣って、あえて日本語っぽい発音にして空気を読んでいました」
お調子者がいたら発音をマネされそうですが、友達は「すごいね」と認めてくれていたといいます。いつの間にか、英語はアイデンティティーになっていました。
得意なはずの英語でしたが、使わないと日々その能力が落ちていく一方です。「英語ができたこともコンプレックスだし、できなくなることがさらにコンプレックスでした」
大学入学後、1年間オーストラリアに語学留学しました。「現地では、ちょっと英語ができると『うまいね』とほめてくれました」。留学のかいあって、英語力を取り戻すことができたといいます。
男性は学生時代、誰に言われたわけでもなく、自分自身を追い込んでいました。自然と「英語のテストではいい点をとって当たり前」というハードルがあったそうです。最低でも95点。むしろ100点を取らないといけないというプレッシャー…。
「周りは、僕が英語をできるかどうかはどうでもいいじゃないですか。でも、自分が出来なきゃいけないと思っているから、勝手にプレッシャーを掛けて。中学の時、テスト前に英語は一番勉強しなくていいはずなのに、一番勉強していました」
男性は帰国子女の環境について次のように語ります。「帰国子女の方が日本に戻って一番苦しむのは、違いを認めてくれないことだと思います」
「日本では、みんな一緒が良いとされる。みんな一緒のランドセル、みんな一緒のうわばき、みんなで掃除しましょうみたいな。ちょっとでも違うとのけ者というか、変な目で見られます。アメリカだと、違うのが当たり前。いろんな民族や国の人がいるので、違うのがステキとなるんですよ。アメリカと日本では、『違いがいいね』というのと、『違いがよくないね』という文化なので、真逆なんです」
ウィズニュースから転載
首都圏ではいまや5人に1人が中学受験をする時代──。もちろん、子供に難関私立や国立、進学実績のいい公立の中高一貫校などを目指せる学力があればいいが、模擬試験の偏差値で遠く及ばない場合、それでも中堅以下の学校にランクを落として中学受験をさせるべきなのか。安田教育研究所の安田理氏がアドバイスする。
* * *
7月、9月と模擬試験を受けたところ、わが子の取ってきた偏差値が40前後だった(Y偏差値と言われる四谷大塚、N偏差値と言われる日能研)。親御さんとしてはショックと同時に、このまま受験勉強を続けても伸びなかった場合にこのレベルの私立中学に進学させるか、迷われるケースが多い。お子さんがこうしたとき、どう考えたらいいのだろうか。
◆中学受験の偏差値は小学校のトップ層でも低く出る
ご自分ないしわが子で中学受験を経験されていない一般の方は、学費のかからない公立中学があるのにわざわざ高い学費を払って中学受験をするというと、男子校の開成・麻布・武蔵、女子校の桜蔭、女子学院、雙葉といった「御三家」と呼ばれる進学校、早稲田系、慶應系などの有名私立大学付属校を目指しているのだろうと、想像される方が未だに少なくない。
だが、そうした学校に進む子は全体からすればほんの一握りに過ぎない。圧倒的多数は、中学受験の偏差値表を見たことがない方は校名も知らないその他の学校に進む(もちろん70、60といった高偏差値を取る子もいる)。
偏差値というと、真ん中の成績であれば「50」ということは誰もが知っている。しかし、あくまで偏差値というのはそのテストを受けた集団の中での相対的位置づけ。したがって高校受験のように中学校での成績が2や1ばかりの受験生もが受けるテストで出る偏差値と中学受験の偏差値はまるで違う。小学校の成績上位者であっても「40」を取ることはザラにある。このことをまず押さえておきたい。
◆受験に臨む姿勢、入試自体も多様化している
難関進学校や有名私大付属校を考えている層はいまでも大手進学塾に小3の3学期から通って、国語・算数・理科・社会の4科を勉強している。
一方、リーマンショック以降、進学塾に入塾する時期が遅くなったり、そもそも通わなかったりという受験層が増えてきている。また、以前だったら受験生活に入った段階で、お稽古事、スポーツクラブを辞めていたものが、小6でも続けさせるというご家庭もある。こうした「ゆるい受験」のしかたが広がってきているのが最近の傾向だ。
私立中学側もそうした受験生の変化、大学入試の変化を受けて、これまでの2科、4科という入試科目から、英語入試、思考力テスト、表現力入試、総合型入試……とさまざまな入試を実施するようになっている。こうした入試はどちらかというと易しい学校で実施しているケースが多い。代表的なものをいくつか挙げてみよう。
・聖学院/思考力ものづくり
・女子聖学院/英語表現力、日本語表現力
・女子美術大学付属/自己表現入試
・桐朋女子/論理的思考力&発想力入試
・桜美林/総合学力評価
・かえつ有明/思考力入試
◆「大学合格実績」から多様な視点での学校選択へ
リーマンショック以降減少していた受験者数も、2015年以降4年連続で増加している。大学入試改革・グローバル化時代への対応で、中高一貫教育が優れているので、わが子の将来を考えたときに私立中高一貫校に進学させておきたいと考える保護者が増えているのだ。
ことに最近、「アクティブラーニング(能動学修)」「ICT(情報通信技術)教育」「探究」「グローバル教育」「サイエンス教育」「国際交流」など特色のあるプログラムを展開している学校が多く、わが子を伸ばしたい方向に合った学校を選ぶという傾向が見られる。
<アクティブラーニング>
・桐蔭学園/全校を挙げてアクティブラーニングに取り組む
<ICT教育>
・聖徳学園/授業のみならず、教員会議もペーパーレス。学校全体がICT化
<探究>
・トキワ松学園/時間割に「思考と表現」が組み込まれている
<グローバル教育>
・佼成学園/モンゴルなど多様な海外体験の機会が豊富
・神田女学園/第二外国語も学ぶ。神田外国語大学とも連携
<サイエンス教育>
・文京学院大学女子/文科省のSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定校
偏差値「40」でも教育内容は高い学校以上のところはいくらでもある。また、このように学校ごとに教育内容に差異が生まれるにつれて、以前のような「偏差値が高い・低い」「大学合格実績が良好・不振」という学校選びから、わが子を伸ばしたい分野が得意な学校を探すという動向が見られるようになった。
リビングで、模試の成績と偏差値表とをにらめっこする時代ではもはやなくなっている。わが子の資質、興味等をしっかり把握したうえで、自分の足で歩いて学校の中身をきちんとつかむことをお勧めしたい。
週刊ポストから転載
世帯平均年収が高いほど教育水準が高くなるということだが、実際にそうなのか。世帯平均年収が高い“ブランド学区”を取材。今回は、東京各区トップ小のうち、千代田区立番町(ばんちょう)小学校と大田区立田園調布小学校の保護者に、ブランド学区のメリットを聞いた。
「千代田区の教育事情を知らずに住み始めて7年になりますが、今の子育てライフに満足しています。桜がきれいな千鳥ヶ淵や、皇居、国会議事堂、国立劇場など観光名所も多いですし、番町文人通りをお散歩しながら子どもに文学の話をするなど、身近な場所でさまざまな知識を身に付けられます」と話すのは、番町小に子どもを通わせる桃井宏美さん。
番町小周辺では、送り迎えできないワーママを意識してか、塾や習い事教室などのサポート面が手厚く、マイクロバスが学校周辺まで迎えにくるサービスもあるそう。
「中学受験をするご家庭が多いようで、学校側も習い事関連も、サポート体制は万全。学校では、熱心な先生方が教育法を研究していますし、学芸会も運動会も、各学年に適した“感情や情緒”を育むような工夫がされています」
学校からオフィスまで、アクセスがいいのも最大のメリットだ。
「半休や離席扱いで学校の行事に参加できるので、仕事と子育ての両立はしやすいと思いますよ」
一方、田園調布小の千葉三紀子さんは、「土地柄、保護者の中には聞くと驚くような方もいらっしゃいますが、私立ではないのでお母さま方もカジュアル。ワーママも多く、付き合いやすいです」と公立小ならではの特色を語る。
「田園調布小の保護者は代々地元の人もいて、子どもたちを地域全体で育てる取り組みもなされていますし、最近は父親の参加も盛んです。また、熱心な先生方が多く、指導も手厚いです。普通の公立小なので、元気な子どもが多いのも特徴かもしれません」
番町小同様、中学受験させる家庭へのサポート体制は万全だ。
「大半の子が受験するので抵抗なく勉強する姿勢が育まれますが、カリカリするイメージはなく、子どもたちはいい意味でのんきで気楽な様子に映ります。習い事と両立する文武両道なお子さんも多いですね。先生方の声かけもプロフェッショナルで温かいです」
中学受験を考える家庭にとって、ブランド学区の公立小は、やはり狙い目なのかもしれない。
プレジデントオンライン
英語の入試を導入する私立中学校が急増し、今年は首都圏と近畿圏の約3割に当たる137校で行われる(実施済み含む)ことが分かった。4年前と比べると、約7倍の増加。2020年度から小学校で英語が正式な教科になり、大学入試の英語も変化するなか、受験生や保護者に英語教育の充実をアピールする狙いがありそうだ。
私立中学校の動向を分析している首都圏模試センター(東京都)と大手進学塾の浜学園(兵庫県)によると、今年入試を行う私立中学は首都圏(8都県)に303校、近畿圏(2府4県)に143校あり、このうち首都圏の109校(約36%)、近畿圏の28校(約20%)が英語入試を行うという。多くの学校は国語と算数が必須で、社会・理科と英語のいずれかを選ぶなどの選択型だが、英語単独の入試もある。
英語入試は従来、もっぱら外国からの帰国生を対象に行われていたが、数年前から一般枠でも行う学校が出てきた。14年は首都圏・近畿圏で計19校だったが、英語が得意な受験生を呼び込もうと中堅校を中心に導入する学校が相次ぎ、137校まで増えている。
2018.1.19
朝日新聞から転載
東京23区学区年収1位の公立小学校
子供によりよい教育環境を与えようと、人気公立小学校の学区に引っ越す世帯は「公立小移民」と呼ばれる。人気公立小学校があるエリアは、教育や家庭内のしつけがしっかり行き届いている価値観の近い住民が多く住んでいる“いい環境”の街で、需要が供給を上回るため資産性も高い傾向にあるという。
そうした地域が人気になっている背景として、「『両親の学歴・平均年収が高い』という点が挙げられる」と話すのは、不動産ビッグデータを駆使した調査・コンサルティングを行うスタイルアクト株式会社代表取締役の沖有人氏だ。住まい選びの際、「学区」と「世帯年収」が重視されるようになってきているのだという。
沖氏が、「住宅・土地統計調査」などをもとに学区別世帯年収を調べたところ、東京23区でもっとも年収が高かったのは、港区の南山小学校だった。
「南山小学校は六本木ヒルズや元麻布ヒルズを含むエリアで、平均世帯年収は1409万円。他の学区の年収1位の公立小学校と比べても、頭一つ抜きんでています。品川区の1位は学校選択制を導入している第三日野小学校です。ここは学区内の対象者だけで受け入れ人数を超過しており、入学希望者は抽選になっているほどの人気です。特にこの学区内ではどの町丁目も平均世帯年収は高く、“白金長者丸”と言われる上大崎2丁目、“池田山”と言われる東五反田5丁目は高級住宅街として知られています」(沖氏)
23区外の東京都下ではどうか。
「都下は23区と比較して鉄道網が充実していない分、学区内に駅を含む小学校ほど利便性のよさから地価も高く、年収も高くなる傾向があります。立川駅前を含む立川市立第三小学校、青梅駅前を含む青梅市立第一小学校、豊田駅前を含む日野市立日野第六小学校などがそうです。
児童数・学級数の多さも人気校の証で、稲城市立若葉台小学校は在校生1000名程度とマンモス校。東京都教育委員会言語能力向上拠点校や文部科学省学習指導実践協力推進校に指定されており、教育環境の高さをうかがわせます。
また、大学や病院などの施設が集積する学区も1位になっています。首都大学東京のある八王子市立宮上小学校、東京外語大がある府中市立白糸台小学校が該当します」(同)
沖氏が運営する不動産情報サイト「住まいサーフィン」では、東京以外にも神奈川県、埼玉県、千葉県の学区別世帯年収1位の公立小学校が紹介されている。都心部と郊外とで違いはあるものの、人気公立小学校の学区は、教育熱心な家庭が多く、住環境がいいエリアである点は共通しているといえるだろう。
【プロフィール】沖有人(おき・ゆうじん):スタイルアクト株式会社代表取締役。国土交通省「住宅エネルギー性能表示検討委員会」の委員なども務める。新刊『マンションは学区で選びなさい』のほか、『マンションは10年で買い替えなさい』など著書多数。分譲マンションの無料会員制情報サイト「住まいサーフィン」を運営。
ここ数年、中学入試の傾向として、大学の附属校や系列校に志望者が集まる「附属志向」が続いています。今回は「附属志向」の背景と今後の見通しについてお話しします。
最近、私が昔教えていた塾の「同窓会」がありました。かつての中学受験生たちは、今は40歳代になっており、わが子の中学受験に直面しています。
その中の一人の、「大学入試がどう変わるかわからないから、進学校は不安。今附属校に入れればそのほうがいいですよ」という女性の話が印象的でした。
「大学入試改革の方向性が不透明」ゆえの「附属志向」、とは以前から指摘されてきたことですが、あらためて当事者の声を聞くと「やはりそうか」という思いがありました。
また、2016年度からの私立大学の定員厳格化により、早慶やMARCH等の倍率が上がったことも、「附属志向」に拍車をかけています。
一方、慶應義塾幼稚舎、青山学院初等部など併設小学校のある学校は内部進学生も増加傾向にあります。また、これまでは女子校の進学校を選んでいた成績層の女子が、共学の附属校を選ぶケースも増えており、「附属」「共学」志向は特に女子に顕著といえます。
東京都の年少人口は東京都区部で2020年~25年までに1割、2025年~30年までにさらに1割減少する見通しです。
2008年のリーマンショック以降、中学受験者数はピーク時の2割がた減少しましたが、その結果、難易度中位以下の学校の志望者が5~6割減少しました。今後小6生人口そのものが減ると、定員を満たせない学校がさらに増えると考えられます。できれば2020年までに、はっきりした特色を打ち出し、実績を上げて定評を得ておきたい、いわば学校の「ブランド」を確立したいという思いのもと、多くの学校現場では模索が続いています。
附属・共学志向が続く中、男女別学や進学校ゆえの良さを打ち出そうとする学校もたくさんあります。
たとえば、共立女子中学では2016年度から「算数+合科型論述テスト」を、品川女子学院では2018年度から算数1科入試を開始します。
近年、理系学部はもちろん、経済学や経営学など、様々な分野で数学が重視されるようになってきました。両校の算数入試は、「女子校は理数教育に弱いのでは」という一般的なイメージを覆し、「時代を見据えて数学、理数教育にも力を入れる」という方針の現れともいえるでしょう。
大学入試改革の根本にあるのは、「高大接続」の考え方です。
これまでの教育は知識偏重に陥りやすく、高校で学ぶことと、大学や社会で求められることにズレが生じやすい面がありました。今後は高校でも、大学や社会で求められる、答えのない課題に取り組むための思考力や判断力、表現力をつけていこう、というのが新しい指導要領の方針です。そのための手段として重視されているのが課題研究です。様々な問題について調べ、思考を深め、話し合いながら解決法を見出していく課題研究の経験は、今後大きな意味を持ちます。
今後の大学入試は、一般入試が減り、推薦・AO入試の枠が広がる見通しです。推薦・AO入試といっても評価方法は大学・学部によって異なりますが、面接や小論文、討論等によって思考力や判断力、表現力を幅広く評価するスタイルの入試は、ますます増えていくでしょう。
附属校には、大学との連携により課題研究を授業に取り入れやすいという強みもあり、今後も人気は続いていくと考えられます。しかし、課題研究の成果が実際に表れるのは時間がかかります。
志望校決定前には、偏差値や大学合格実績といった数値にまず目が行きがちですが、今後は教育の「中身」をより深く吟味する必要性が増してくるのではないでしょうか。
ベネッセ 教育情報サイト
医学部に強い高校をみる指標としては、一人の生徒が複数校に合格できない国公立大医学部の合格者数でランキングするのが一般的だ。しかし、私立専願の生徒もいるし、首都圏では地方の国公立大と首都圏の私立大に合格した場合、自宅から通える私立大を選ぶケースも多い。
週刊朝日ムック『医学部に入る 2018』では、「国公立大」と「私立大+防衛医科大」それぞれの合格者数の高校ランキングトップ40を調査。表にまとめたので、ぜひ見てほしい。
国公立大のランキングでランクインした公立校は11校。私立大のランキングでは日比谷(東京)のみだ。中高一貫校の医学部合格者数“上位独占”は、今年も続いているといえる。
ここでは「東日本編」として、北海道から中部までの「医学部に強い高校」をお届けする。
* * *
■北海道
国公立大合格高校ランキングでランクインしたのは、13位の札幌南、37位の北嶺。47 人の合格者を出した道立トップ校の札幌南は、全国の公立で2位だ。医学部志望者が多いため、生徒と保護者対象の「医学部医学科研究会」を開催している。東北大、大阪大など北海道以外の大学にも14人の合格者がいるが、札幌南以外の道立高校の合格はほとんどが道内の大学だ。
札幌市の北嶺は、卒業生の3分の1ぐらいが医学部に進学する。高3は放課後に、「医進英語」「東大理系数学」などの講習を受講できる。
寮に入って国公立大医学部や東大を目指す「青雲寮コース」が人気だ。夜、中学生は自習室で集団自習。高校生は部屋や自習室で学習する。教員のほか、OBの医師や医学生が巡回して指導する。今年の中1は140人中47人が寮に入った。「寮は定員があるため、入試の成績順に入寮します。合格したけれど寮に入れなかった本州の生徒は入学しないだろうと思っていたら、今年は15人の生徒が母親や妹弟とともに札幌に住んで通学することに。このため、1クラス増やしました」(谷地田穣校長)
■東北
国公立大のトップ40に入ったのは23位の仙台第二(宮城)と31位の秋田(秋田)で、私立大のトップ40には1校も入っていない。
東北でもっとも医学部合格者数が多い仙台第二(宮城)には、医学部志望の生徒が入る「医進会」がある。「医師の講話を聴く、都市部と過疎地域の病院を見学するなどの会のプログラムによって医師になる心構えが育ち、モチベーションも上がるようです。2010年度に医進会を始めてから医学部志望の生徒が増え、医学部合格者も増えました」(仙台第二の菊地敏広進路指導部長)
秋田は、昨年の国公立大合格者数22人から35人と増加。「医学部志望者向けの『医学部ガイダンス』に加え、毎月14日を語呂合わせで『医師の日』とし、1カ月間の医療ニュースなどから生徒が選んだテーマに対して意見を書き、教員がそれを読んでコメントしています」(進路指導主事の土門高士教諭)
この学校の取り組みに加え、医師確保に悩む秋田県が実施する県内各病院での「医師体験」、医師・医学部の講演会などにも参加しているという。
■関東
国公立大医学部は6大学しかないが、私立大+大学校は19大学もある。
国公立大のトップ40に入ったのは、7位の開成、16位の麻布、桜蔭など6校。すべて、中学入試の偏差値が高い中高一貫校で、千葉の渋谷教育学園幕張以外は東京の学校だ。
私立大のトップ40を見ると、その6校に加え、21校がランクイン。27校のうち実に20校が東京の学校で、東京の強さが際立っている。
御三家をはじめとしたトップ進学校は、医学部受験のための特別なコースや指導がないところがほとんどだ。そんななか、国公立大33位、私立大3位の海城(東京)は、医学部志望者を対象とした「医学部小論文・面接講座」を04年度から実施している。「高2の3学期に、理想の医師像や医師を目指す理由について考えます。高3では『先端医療論』などの講義を受け、ディスカッションをしてから小論文を執筆。代表作品を合評します」(内田玄司教頭)
■中部
国立の名古屋大、公立の名古屋市立大、私立の愛知医科大、藤田保健衛生大と四つの医学部がある愛知県が圧倒的に強い。国公立大合格者数トップ40に入った東海、南山、旭丘、滝はすべて愛知県の高校だ。
国公立大合格者数が10年連続日本一の東海は、私立大も1位だ。医学部入試のための特別な指導は行っていないが、もともと医学部志望の生徒が多いところに「医学部に強い高校」というイメージが定着し、医学部志望の男子生徒が集まっているようだ。
医学部志望の女子に人気の南山・女子部も、医学部受験に特化したクラスや指導はない。「女子は地元志向が強いため、自宅から通える名古屋大、名古屋市立大、三重大、岐阜大、浜松医科大や県内の私立大を目指す生徒が多いですね」(濱口吉宏教頭)
一方、滝には医・歯・薬系志望者コースがある。「医・歯・薬系志望者コースでは、医療問題の討論をすることもあります。医学部志望者を対象に、河合塾の講師が年に約20回行う『小論文指導』は、毎年60~70人が受講しています」(戸田誠教頭)
(文/庄村敦子)
※週刊朝日ムック『医学部に入る 2018』から抜粋
中学受験をするかしないか、迷っている保護者のかたは多いようです。今は決められないけれど、受験する可能性は残しておきたい……そんなふうに考えているかたも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、中学受験の学習はいつまでに始めるべきかについてお話しします。
一般的に、中学受験を目指す塾や家庭学習のカリキュラムは4年生から始まります。4・5年生でひととおりのカリキュラムを終え、6年生で過去の入試問題など、志望校に特化した対策を行うというのがおおよその流れです。とはいえ、子どもの成長度合いは個人差が大きいものです。特に精神的に幼くみえるお子さまの場合、「4年生の4月から、受験勉強なんてできるだろうか」と保護者のかたが心配されるのも無理はないと思います。
結論から申しますと、「もし迷われているようであれば、習い事感覚ででも、4年生から中学受験の勉強を始めてみては」というのが私の考えです。
9~10歳は知的好奇心が旺盛になり、思考力が大きく伸び始める時期です。そのため、小学校では3年生から理科や社会の学習が始まり、科学的なものの考え方を身につけ始めます。ドイツのギムナジウムや英国のプレップスクールなど、高度な教育機関を目指す中等教育が始まるのも10歳からです。4年生は、勉強を本格的に始めるのに適した時期なのです。
もちろん、深く学ぶ手段は他にもいろいろありますが、中学受験は学習の動機づけとして有効です。また、4年生であれば「楽しみながら興味を広げる」というスタンスで、気軽に学習を始めることが可能です。内容がそれほど難しくなく、時間的な拘束も少なく、5、6年生より費用も安いケースがほとんどです。
実際に中学受験をする・しないは別として、お子さまに「一歩踏み込んで深く学ばせたい」という希望をお持ちでしたら、学習のペースメーカーとして、中学受験のための塾や家庭学習を利用してみてはいかがでしょうか。
なお、公立中高一貫校の場合、小学校の教科書から大きく離れる内容は出題されませんが、自分の考えをまとめて「書く」力が要求されますので、1年~2年の対策期間は必要です。
4年生の学習において大切なのは、お子さまの「好きなこと」「得意なこと」をいかに発見するかということです。
大学入試改革に先んじて、中学入試の選抜方法も多様化しています。適性検査型入試や英語入試を導入する学校も増えていますし、自分の得意分野について自己アピールを行うプレゼンテーション型の入試も注目されています。「自分なりの興味・関心を軸に、思考を深めていける主体性のある子に来てほしい」という考えのもとで入試を行う学校が増えているのです。「好き」や「得意」がはっきりしていれば、それを入試で生かせる可能性があります。
ですから、音楽やスポーツなど、お子さまが熱心に取り組んでいる習い事や趣味があればぜひ続けるべきです。特に英語は、今後入試に生かせるケースが増えてくるでしょう。
このように、4年生の間は楽しみながら学ばせて適性を見極め、どの学校の、どんなスタイルの入試を目指すか、情報を集めながら方針を立てていただきたいと思います。この段階では、選択肢を狭めないことが大切です。
尚、中学受験において差が付きやすいのが算数です。また、国語も、特に男の子は苦手なケースが多いので始めておいたほうがよいでしょう。4年生では、算数と国語だけ塾などで勉強を始めておき、理科・社会は科学教室や博物館へ行く、家庭で図鑑や参考書で調べるなどして、楽しみながら少しずつ興味を広げていくという方法もあります。
なお、学習の難易度や量は、お子さまに合っているかどうかよく見極めてください。塾の授業や家庭学習のテキストが難しすぎて、勉強が嫌いになってしまっては本末転倒です。難易度が高い塾にあえて入れたいのなら、「今は全部できなくて大丈夫」「順位は気にしなくていいよ」などと、保護者のかたがはっきり言ってあげる必要があります。
「中学受験するか」「どこを第一志望にするか」は、5年生進級までに決定していただきたいと思います。うちの子にはどんな勉強が合っているのだろう……と、楽しみながら考えて方針を固めるのも、保護者にとって楽しみのひとつかもしれません。
(筆者:森上展安)
ベネッセ 教育情報サイト
東洋経済オンライン 2/8(水)
8時15分からの5分間だけは、まるで時が止まってしまったかのような静寂に包まれる
名門進学校で実施されている、一見すると大学受験勉強にはまったく関係なさそうな授業を実況中継する本連載。第2回は東京・池袋の女子校「豊島岡」の「深イイ授業」を追う。
第1回:東京の進学校「海城」が学ばせる究極の対応力
■真っ白な布に、赤い糸を縫っていく
池袋駅東口からまっすぐ伸びる大通りに面して、豊島岡女子学園中学校・高等学校(以下、豊島岡)はある。8階建ての校舎は、よく見ればたしかに学校らしいたたずまいではあるが、気をつけていなければまわりの商業ビルやオフィスビルにまぎれて素通りしてしまうかもしれない。通りの反対側から見ると、豊島岡の校舎の背後にはサンシャイン60がそびえている。
朝7時、校門が開く。始業時間の8時10分までにはまだ余裕があるが、パンパンに膨らんだカバンを両手に持った生徒たちが吸い込まれていく。部活の朝練かもしれない。名物「月例テスト」の追試かもしれない。
「月例テスト」とは、朝のホームルームの時間を使って実施される5~10分間の小テスト。高1までは漢字、英単語、数学の3種類。高2以降は古文単語、英単語、そして理科または社会の3種類。それぞれ月に1回のペースで実施するので、結果的に毎週いずれかの月例テストを受けることになる。しかも合格点を取れるまで追試が待っている。
これが豊島岡生の基礎学力を担保し、昨今の大学合格実績の土台になっていることは間違いない。東大合格者数に関して言えば、いわゆる女子御三家をも凌駕する実績を誇っている。
8時15分からの5分間だけは、豊島岡の校舎全体が、まるで時が止まってしまったかのような静寂に包まれる。私語は一切許されない。いすを引く音すらしない。「運針」の時間だ。
豊島岡の生徒は1人ひとり、真っ白な布と、真っ赤な糸と、そして裁縫針を机の中に持っている。8時15分のチャイムが鳴ると、赤い糸で白い布の端からまっすぐに、針目をそろえて縫っていく。
先生も黙っている。そしてただ、生徒1人ひとりの針の動かし方をじーっと見ている。
布の長さは約1メートル。そこに赤い縫い目が描かれていく。端から端まで縫い終わると、そのまま赤い糸をすーっと抜き取り、また初めから縫い直す。5分間、無言で、ひたすらそれをくり返す。
手際のいい生徒は、リズミカルに、針よりもむしろ白い布のほうをぱたぱたとあおぐように動かし、あっという間に端から端まで縫い終わる。何度もそれをくり返す。素早く縫っているのに、縫い目は機械で縫ったかのように均等で、まっすぐだ。縫うときの姿勢も目つきもいい。
性格にもよるのだろう。スピードは遅くとも、一針一針確かめるように縫う生徒もいる。それはそれで、美しい縫い目ができあがる。
一方、どうも気が乗らないのか、寝不足なのか、首をかしげながら縫う生徒も中にはいる。縫い目は大きくまばらになる。まっすぐでもない。
素人の私が遠目に見ても、1人ひとりの針の動きがよくわかる。白い布の上に描かれた赤い糸の縫い目には、個性すら感じる。
8時20分のチャイムが鳴ると、学校全体ににぎわいが戻る。静と動のコントラストが印象的だ。
■1日1ミリでも、昨日の自分を越えていく
豊島岡の起源は1892年にまでさかのぼる。裁縫学校として始まった。裁縫上手な普通の女性が、近所の女子たちの手に職を付けるために、縫い物を教えたという生い立ちだ。女性の自立のため、裁縫だけではなく、算術や簿記も教え、評判となった。大正時代になると女子への教育熱も高まったため、裁縫よりも普通教育に軸足を置くようになる。
毎朝の「運針」が始まったのは戦後のことである。先先代の二木友吉校長が、幼い頃にやらされた黙想にヒントを得つつ、学校の伝統である裁縫の要素を取り入れたのだ。
ちなみに週1回は「運針」の代わりに「月例テスト」を行う。つまり、「月例テスト」も努力の積み重ねの大切さを学び、基礎基本の大切さを知る機会であるということができる。全生徒が6年間、コツコツと努力を続けた結果が、大学進学実績になって表れているのだ。その意味で、「運針」と「月例テスト」はどちらも豊島岡の教育の柱であり、相乗効果を生み出しているといえる。
自身も豊島岡の卒業生である竹鼻志乃校長は、「運針」を「5分間の禅」と表現する。生徒にとっては毎朝5分間、集中力を高め、心を鍛錬する意味がある。担任にとっては、生徒をじっくり観察する時間でもある。針の動かし方、赤い糸の縫い目を見れば、その生徒のその日の心の状態がわかると言う。実際「イライラしているときは針目が乱雑になります」と言う生徒もいる。心の状態が、赤い糸の縫い目に表れてしまい、ごまかしようがない。
■昨日の自分を1ミリでも越えようという意識で
最初からうまく縫える子は少ない。中1の1学期間を経ても上達しない生徒には、家庭科の教員による夏休みの特訓が待っている。最初は5分間で10センチメートルも縫えないということも多い。しかし1年後にはほとんどの生徒が1メートルを縫えるようになり、さらに2メートル、3メートルと伸びていく。
かといってスピードや正確さを競わせることはない。進み方は人それぞれ。まわりとの比較ではなく、昨日より今日、今日より明日と、1日1ミリでもいいから進歩することが大事。「運針」をすることで、豊島岡生は毎朝、昨日の自分を1ミリでも越えようという意識になるのだ。
しかも運針では毎回、最後には糸を抜き去ってしまう。どんなに頑張っても形が残らない。「それが大事」とある教員は力説する。形を残すことは目的ではない。生徒たちは「大切なものは自分の中にしか残らない」というメッセージを受け取って卒業していくのだ。
首都圏の中学受験が本番を迎え、2月上旬に多くの中学校が入試を実施する。東京・神奈川の中学入試解禁日は毎年2月1日に設定されており、難関校の入試は1日と2日に集中する。
◆受験パターンの多様化
最近の中学入試の傾向としては、複数回の入試を設定し、その機会の多さや受験しやすさから多くの受験生を集める学校が増えてきている。また、午後入試が定着し、1日2回入試を行う学校もあり、受験パターンが多様化してきている。
ここ数年、受験者数の増加で注目される広尾学園は、12月実施の「国際生」のほか、2月1日の第1回(午前)、第2回(午後)、2月2日の医進・サイエンス回、インターAG回、2月5日の第3回と6回の入試を行い、第1回は前日まで、その他は入試当日まで出願を受け付けるなど柔軟に対応する。
◆インターネットの活用
インターネット合格発表校は年々増加しており、即日、合否が確認できる学校も増えてきている。たとえば2月1日入試校が第1志望の受験生は、当日中に合格が確認できれば、2日以降の併願校を受験せずに済み、早期に受験を終了することができる。豊島岡女子学園、世田谷学園、攻玉社、洗足学園などの難関校も即日、インターネットで合格発表を行う。
大学入試では一般的となったWeb(インターネット)による願書受付は、中学受験においても対応校が増加してきている。一方で、未だ窓口のみで受付を行う学校もある。たとえば、桜蔭と女子学院は郵送での受付を行っておらず、麻布も「願書はなるべく持参するように」としている。
◆難関校の偏差値と倍率
東京・神奈川の難関校の倍率を見ていこう。あわせて偏差値【首都圏模試センター・SAPIX小学部】も示す(※1)。
栄光は、2015年の3.7倍、2016年の3.5倍から2017年は4.0倍と、過去3年間で最高倍率。一方で同じ神奈川で同日入試の聖光(1回)は、2015年の4.4倍、2016年の4.2倍から4.0倍と微減。開成、麻布はほぼ例年どおりの倍率となっている。
女子学院は2015年の4.0倍から、2016年の2.9倍、2017年の2.8倍と減少傾向にあるが、2015年はサンデーショック(※2)により一時的に志願者が増加したと考えられる。
最上位層の難関校の1日、2日の入試では、男子は3~4倍、女子は2~3倍程度が多く、目立った高倍率とはならないが、成績上位層が集中することから、倍率にかかわらず、厳しい入試が予想される。
<男子校>
開成【偏差値:首都圏模試77・SAPIX66】定員300名・応募者1,195名・4.0倍
聖光学院(1回)【76・64】定員175名・応募者695名・4.0倍
栄光学園【75・60】定員180名・応募者713名・4.0倍
駒場東邦【74・61】定員240名・応募者532名・2.2倍
麻布【74・60】定員300名・応募者967名・3.2倍
<女子校>
桜蔭【76・62】定員240名・応募者516名・2.2倍
女子学院【74・60】定員240名・応募者676名・2.8倍
雙葉【73・58】定員100名・応募者366名・3.7倍
フェリス【71・55】定員180名・応募者422名・2.3倍
◆大学附属校の人気
今年の中学受験の傾向を聞いた11月の取材では、サピックス小学部と四谷大塚は、特に附属校志向の高まりをあげていた。人気附属校の一部の志願倍率と偏差値を見ていこう。
早慶では、1日校の倍率に大きな変化は見られないが、3日の慶應義塾中等部の女子で、昨年の7.9倍より0.5ポイント高い8.4倍と高倍率。青山学院は、2015年4.1倍、2016年5.9倍からさらに倍率が上がり6.1倍。明治大学付属明治は、2015年の7.3倍、2016年の7.2倍から2017年は7.5倍と、過去3年間で最高倍率となった。
<2月1日入試>
慶應義塾普通部【73・57】定員(男)約180名・応募者566名・3.1倍
早稲田実業学校【72・58】定員(女)40名・応募者195名・4.9倍
早稲田(1回)【72・57】定員(男)200名・応募者787名・3.9倍
早稲田実業学校【72・54】定員(男)85名・応募者344名・4.0倍
早稲田高等学院【69・53】定員(男)120名・応募者407名・3.4倍
立教女学院【65・-】定員(女)約110名・応募者288名・2.6倍
中央大学附属(1回)【64・-】定員(男女)100名・応募者(男)182名/(女)226名・4.1倍
中央大学附属横浜(1回)【63/65・-】定員(男女)80名・応募者(男)230名/(女)259名・6.1倍
法政大学(1回)【61/64・-】定員(男女)約50名・応募者272名・5.4倍
<2月2日入試>
慶應義塾湘南藤沢【72・58/60】定員(男女)約120名・応募者(男)319名/(女)320名・5.3倍
明治大学付属明治(1回)【67/69・53】定員(男女)約90名・応募者(男)377名/(女)302名・7.5倍
立教池袋(1回)【65・-】定員(男)約50名・応募者236名・4.7倍
青山学院【64/68・-/54】定員(男女)約140名・応募者(男)360名/(女)497名・6.1倍
<2月3日入試>
慶應義塾中等部【74・63】定員(女)約50名・応募者420名・8.4倍
慶應義塾中等部【71・56】定員(男)約140名・応募者851名・6.1倍
※1 志願者数は日能研入試情報の「倍率速報」を参考にした。
偏差値は「首都圏模試センター:1月更新の2017年予想偏差値」と「SAPIX小学部:第4回 12月4日(日)の合格力判定サピックスオープンの結果をもとにした2017年中学入試 予想偏差値」より掲載。いずれもWebで公開されている情報に基づいて掲載した。情報が公開されていないものは「-」とした。共学校で男女別の定員がなく、偏差値が異なる場合は「男/女」と示した。
※2 入試日の2月1日が日曜日にあたるため、プロテスタントの女子学院が2月2日に入試日を変更することにより桜蔭と女子学院を併願可能になる。
リセマムから転載 2017.2.1
昨今の中学受験では面接の場を設けている中学はさほど多くありません。
帰国子女枠を持つ私立中学などでは別途面接を必須としているところが多いようですが、基本的な姿勢として入学選抜試験による点数を重視する学校がほとんどです。
お子さんと保護者が同時に面接に当たる場合もあれば、お子さんはグループ面接、保護者は単独と言ったようにバラバラに面接という場合もあります。年度によって募集要項が変わることもありますから、詳細は志望校の募集要項をしっかりと確認するようにしましょう。
多くの場合、面接時に質問される代表的な内容は下記のようになっています。
それぞれの質問は面接官の聞き方で行われますが、基本的には慌てず落ち着いて、嘘がないよう丁寧に答えることが大切で、質問への返答内容はあまりに突飛で非常識でなければ、これが正解だという答えがあるものではありません。
集中して、面接官へ真摯に答えることを意識して取り組みましょう。
特に、お子さんへの質問へお母さんが慌てて答えてしまうとか、お子さんが答えた内容を無意識に真っ向否定してしまう、キリスト教系の学校なのにその指導方針を真っ向否定してしまうといったような凡ミスがないようにしたいですね。
動揺して頭が真っ白になってしまって何を言っているのかわからない、ということがないように、事前に何度かロールプレイしておきたいところです。
他のお子さんはどんな服なんだろう、私はどんな服がいいのかしら?
面接での服装はどうしても気になる点の一つです。普段の服装で、と指示されている学校もありますが、面接当日周りの服装が気になって面接が上の空になってしまうと元も子もありません。
制服のある小学校ならお子さんは制服で、もし制服が無い小学校なら、入学式や卒業式を思い出して、今から中学生になるお子さんの凛々しさが伝わる服装が良いでしょう。
ブレザーなどが選択肢に上がると思いますが、中学受験と面接が同じ日の場合は入試を主に考えましょう。腕が動かしにくいピッチリしたブレザーでは入試に集中できないかもしれません。
その場合はブレザーを脱いで試験を受けても寒くないように、カーディガンやセーターなどで調整できるようにしておきたいですね。
保護者の服装は一般的なスーツやジャケットがおすすめです。
冠婚葬祭を思わせる黒ではなく、グレーや紺色などのスーツやジャケットで、ジーンズなどのあまりにカジュアルな服装は避けておきましょう。
上品で、中学受験生の父親、母親としての安定感を感じさせる服装を意識していただきたいと思います。
同様の理由で、アクセサリーは最小限で華美でないものにしておきましょう。
お母さんの中には張り切ってネイルを仕上げてくる方もいらっしゃるようですが、派手にならない長さでナチュラルな色にしておくほうが無難です。
面接は概ね10分程度のことがほとんどです。
その時間の中で面接官はお子さんの普段の様子やご家庭での様子、これから学校に協力的なスタンスでお子さんの成績向上を考えてくださるかどうか、などを確認していきます。
多少詰まったり言い間違えたりしても問題はありませんので話し方を極端に意識する必要はありませんし、面接で大幅に減点されてしまうこともほぼありません。
が、服装と同じくあまりに話し方が常軌を逸しているとよろしくありません。
丁寧に、そして面接官との意思疎通がしっかりと出来るように、尚且つこの学校に合格したいという熱意がきちんと伝わるように話しましょう。
以上、「中学受験の面接を上手に攻略」というテーマの記事でしたがいかがでしたか?
中学受験勉強を進めていく中で、面接のある学校を選択するなら面接がマイナスになるとは考えず、合格したいという熱意を伝えるチャンスがあると考えて、丁寧に、でも神経質にならずリラックスして臨むようにしたいところです。
2017.1.13『かしこい塾の使い方』 から転載
推薦入試といえば、「内申点が重要で、学力検査がない入試」というイメージをもたれているかたも多いかと思いますが、私立と公立、各都道府県、各校によって内容は異なるので、事前に十分情報を集めておく必要があります。 今回は、推薦入試の概要と準備についてお話しします。
推薦入試の出願の目安となるのが、各高校で定める推薦基準です。推薦基準は、たとえば5教科で20以上、9教科で36以上と、内申点によって定められています。ただし、部活動や生徒会活動の実績、出席状況、英検や漢検などの検定・資格などにより加点となる学校も多数あります。
ほとんどの私立高校が、「推薦入試を受けられるか」「成績が推薦基準ぎりぎりの場合、他にどのような入試方法があるか」などについて、個別に相談できる入試個別相談会を行っています。関心のある高校があれば、訪れて積極的に相談されることをおすすめします。
基本的に学力検査はなく、調査書(内申書)と面接、作文などで選抜されることがほとんどですが、なかには適性検査を課す学校もあります。また、推薦入試を受けられれば、一般的に合格の可能性は高いと考えられていますが、難関校や大学付属校などでは、適性検査等で厳しい選抜が行われる場合があります。
また、推薦入試は単願(合格したらその学校に入学すると確約して受験)のみの都道府県も多いですが、埼玉県や千葉県の私立高校のように、併願推薦を認めているところもあります。
志望校の推薦入試の制度や試験の内容については、入試個別相談会で質問するなどして早めに情報を集めておきましょう。
「推薦入試」という名で選抜を行う公立高校は近年減ってきていますが、学力検査を行わないタイプの選抜は都道府県によって多様な方法で行われています。選抜方法は調査書(内申書)のほか、面接、集団討論、作文、小論文、適性検査など様々です。公立高校の推薦入試は、学力検査がなく、早い段階で合否が決まることもあって、非常に高倍率となるケースが多くなっています。
このように、ひと口に推薦入試といっても求められることは様々ですが、次からは、推薦入試で課されることの多い作文・面接対策について述べていきます。
一般的によく出されるテーマは「志望動機」「中学生活で印象に残ったこと」「高校生活への抱負」「将来の夢」などです。過去に出題されたテーマや字数をあらかじめ調べ、指定字数内かつ字数の8割以上で書けるように練習しておきましょう。抽象的な事柄だけでなく、具体的な実体験を入れて書くと、自分らしさの伝わる良い作文になります。たとえば「高校生活への抱負」で、英語を頑張りたいというテーマで書くのであれば、英語を好きになったきっかけや、その学校の英語教育のどんな部分に魅力を感じたのか等について、具体的に書けるとよいですね。
保護者のかたは、字数や誤字・脱字をチェックするとともに、内容にもひと言コメントしてあげてはいかがでしょうか。
面接試験の大きな目的は、「受験生の意欲を見る」ことです。緊張して上手に話せなくてもさほど気にする必要はありませんが、「この学校で学びたい」という意欲ははっきり伝える必要があります。上に挙げた作文のテーマは面接でもよく質問されますが、特に「志望動機」は意欲を伝える上で重要だと思います。学校見学で先輩が優しく接してくれた、文化祭に憧れた、将来の夢につながるコースがあった…など、その学校に行きたいと思った理由を具体的に話すようにしましょう。
また、質問者の意図をくみ取って端的に答えることも大切です。たとえば「今日はどうやって来ましたか」という質問には、通学ルートを知りたいという意図も含まれているわけですから「電車で」とひと言で済ませるのではなく、「〇駅までバス、そこから〇〇線に乗って来ました。〇〇分くらいかかります」などと具体的に答えるほうがよいでしょう。
推薦入試は、選抜方法が学校によって多様なため、事前の情報収集が大切になります。
また、面接や作文等で、初対面の大人に向かって自分の考えを伝えることは多くのお子さまにとって初めての経験だと思います。推薦入試の前には、お子さまの身だしなみに気を配るとともに、ひとりの大人として、より相手に気持ちが伝わりやすい言葉遣いについてアドバイスしてはいかがでしょうか。
(筆者:安田 理)
ベネッセ情報教育サイト から転載